永久脱毛のメリットとデメリット②
続いて、永久脱毛のもう一つの方法、レーザー脱毛について詳しく見ていきます。
レーザー脱毛法の特徴
永久脱毛をするには、毛を作る部分である毛根部の細胞にダメージを与えなければなりません。永久脱毛のメリット・デメリット(上)で取り上げた、電気針式脱毛法では、電気による熱などで、毛根部分の細胞を破壊していました。それでは、レーザー脱毛法では、どのように毛根部にダメージを与えているのでしょうか?
結論から言うと、レーザーによって熱を生み出し、その熱で毛根部分の細胞を焼いてしまうのです。その結果、毛乳頭や毛母細胞といった毛を作るのに必要な細胞を破壊し、毛が生えないようにしているのです。
では、レーザーを当てると、当ったところ全部が熱くなるのでしょうか?いえいえ、違います。レーザーが当たっても、通常の皮膚の部分は熱くなりません。毛根部分だけが熱くなるようになっているのです。毛根部分だけを加熱する、そのためにレーザーという方法を使っているのです。もう少し詳しく説明していきましょう。
レーザーの種類と効果
レーザーは、特殊な光です。どう特殊かというと、普通の光とは違って波の波長と位相(並の位置)が揃った光です。いくつもの波がきれいに揃っているために、通常の光とは桁外れのエネルギーを持つ、強力な光になっています。
医療で活躍しているレーザーにはいろいろな種類があります。レーザーを作る元となる材料によって、できるレーザーの種類が違います。良く見かけるのは次の通りです。
■炭酸ガスレーザー
■YAGレーザー
■半導体(ダイオード)レーザー
■ルビーレーザー
■アレキサンドライトレーザー
■色素レーザー
レーザー発振に使う物質が違うと、出てくる光の波長が違ってきます。波長が違ってくると、どんな物質に吸収されやすいかが変わってきます。そのため、使い方が変わってきます。
例1)炭酸ガスレーザー
材料:炭酸ガス(二酸化炭素)
波長:10600nm(遠赤外線)
特徴:良く水に吸収され、一瞬で蒸発させる。
用途:レーザーメスなど、ごく狭い範囲を焼くことが出来る。
例2)半導体(ダイオード)レーザー
材料:ガリウム、アルミニウム、ヒ素の化合物の結晶
波長:830nm付近(赤~近赤外線)
特徴:水よりもメラニン色素に良く吸収される
用途:シミ、ソバカス、色素沈着など
脱毛に最も向いているレーザーは、アレキサンドライトレーザーです。
アレキサンドライトレーザー
材料:ベリリウム、アルミニウム、酸素の化合物の結晶
波長:755nm (赤い可視光)
特徴:水よりもメラニン色素への吸収が100倍以上大きい。
用途:脱毛、入れ墨、血管腫 など
レーザーの波長と吸収係数
以前はYAGレーザーによる脱毛などもされていましたが、今は主流ではありません。どうも効果が今一つのようです。YAGレーザーは痣やシミの除去で多く利用されています。色々な研究の結果、現在のところ、脱毛に関して一番効果があるのはアレキサンドライトレーザーです。
毛根だけを加熱する | 狙いはメラニン色素
アレキサンドライトレーザーを照射すると、皮膚で何が起こるのでしょうか?
アレキサンドライトレーザーの波長は水に吸収されにくく、メラニン色素に吸収されやすい特徴があります。そのため、レーザー光線は皮膚に当たってもすぐには吸収されず、表皮の下の方まで届きます。
メラニン色素は、肌の色を黒くし、有害な紫外線から身を守るバリアの働きをします。このメラニン色素を作る細胞を色素形成細胞といいます。色素形成細胞は表皮と真皮の境目である基底部に多いのですが、実は毛根部分にもあるのです。毛根部分には色素形成細胞が集まっていて、メラニンを大量に作っています。そのメラニンが毛に入り込み、黒い毛となるのです。レーザーは、この毛根周辺のメラニン色素を狙っているのです。
メラニン色素にアレキサンドライトレーザーが当たると、色素にレーザーが吸収されます。すろと、レーザーの持っていた光エネルギーがメラニン色素の部分で熱エネルギーに変わります。そのため、瞬間的にメラニン色素周辺の温度が急上昇します。この熱で毛根周辺の細胞を破壊して、永久脱毛を実現するのです。
レーザー脱毛法のメリット
◎メリット1.一回の脱毛にかかる時間が短い
脱毛のために何をするのかというと、レーザー光を「ピッ!」と当てるだけです。1度にレーザー光線の面積分だけ脱毛できます。直径1㎝の円ぐらいの面積を脱毛できるようです。
そのため、両脇の脱毛であれば、30分程度で終わってしまいます。
◎メリット2.痛みが少ない
レーザーが当たった瞬間、毛根が加熱されるので、「ピッ」と痛みが走ります。どの程度かというと、「輪ゴムをパチンとはじいた程度」と表現されます。この程度なら、余裕で我慢できるという意見が多く見られます。
また、痛みが軽いということは、肌へのダメージが小さいということでもあります。永久脱毛脳方法としては、現在のところ最も肌へのダメージが小さい手法と言えます。
レーザー脱毛法のデメリット
レーザー脱毛は、最も新しい脱毛法ですが、当然欠点もあります。
▲デメリット1.日焼けした肌には使えない
先の説明の通り、レーザー脱毛が狙っているのはメラニン色素です。日焼けはのときの小麦色の肌は、表皮すぐ下の基底部当たりに大量に作られたメラニンが原因です。基底部にある色素形成細胞が刺激されると、体を守るための防護膜としてメラニンが大量に作られるのです。
したがって、日焼けをしていると、レーザーが毛根に届く前に肌で吸収されてしまいまう。そのため、毛根を加熱することできず、脱毛も出来ないという結果になります。そのため、日焼けしている人は、色が薄くなるまでレーザー脱毛待たなければなりません。
▲デメリット2.色素沈着を起こしている部分には使えない
色素沈着を起こしている肌には、レーザー脱毛が出来ません。この理由はデメリット1と同じで、レーザーが毛根に届く前に、他の部分に吸収されてしまうためです。
もっとも、レーザー治療はシミやソバカスといった色素沈着した部分を目立たなくするために使われてきたものです。その治療の副産物として脱毛効果が見いだされ、確立されてきました。ですから、まずレーザー治療で色素沈着の部分の色を薄くしてから、レーザー脱毛するということも出来るでしょう。
医師に相談すれば良いアイデアがあるかもしれません。
▲デメリット3.うぶ毛の脱毛には不向き
レーザー脱毛は、毛根部分に多くあるメラニン色素をターゲットにしています。ですから、うぶ毛のような、メラニン色素の少ない部分の毛に関しては効果があまりありません。
クリニックによってはYAGレーザーで効果があると言っているところもありますが、少数派です。安定した効果が見込めないと思っていたほうが良いかもしれません。
レーザー脱毛に関する厚生労働省の通達
厚生労働省は、平成13年11月8日の医政医発第105号で、「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて」という通達を出しています。その主旨は、「レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭、皮脂腺開口部等を破壊する行為」や、「針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為」は医師法第17条に違反するという通達でした。
厚生労働省 平成13年11月8日 医政医発第105号
これは、脱毛によって体に傷を負う事件がたびたび生じたことが原因です。したがって、エステで行われている光脱毛の光は、医療機関が行っているレーザー脱毛で使われているレーザーほどのエネルギーがありません。そのため、永久脱毛に必要な細胞を破壊するほど、加熱するのは難しいでしょう。
ですから、エステなのに「レーザー脱毛」を行っているところは、嘘をついているか、法律違反をしているかのどちらです。くれぐれも、そんなところに行かないように気を付けて下さい。
レーザー脱毛のまとめ
レーザー脱毛は、
- 短時間
- 肌へのダメージが少ない
- 痛みが少ない
という点で、今のところ最も優れた脱毛方法です。注意点としては、
- うぶ毛への効果が低いことです。
という点です。